飛距離ではなく「再現性」を選んだ全米オープン王者
2025年全米オープンを制したJ.J.スポーン(J.J. Spaun)は、PGAツアーの中でも異色の存在だ。スピードトレーニングを試みたことはあるが、弾道モニターの数字が上がるにつれてショットの散らばりが広がった。彼の結論はシンプルだった——「数ヤードの上積みのためにコントロールを捨てることは、自分にとって悪手だ」。Driverのボールスピードはあえて170mph台中盤に落ち着かせ、そこを「自分のDNA」と表現している。
ゴルフボールがすべての起点
スポーンの機材選びは、アイアンでもDriverでもなく、ゴルフボールから始まる。彼はすべてのショットで使われる唯一の道具であるボールを「技術的なエコシステムの基盤」と位置づける。
長年にわたってSrixon Z-STARを使用していたが、やや柔らかさに物足りなさを感じていた。硬めのZ-STAR XVを試すとスピンが落ちすぎ、難コースでのグリーン保持力が失われた。転機となったのがZ-STAR Diamondの登場だ。圧縮率が両者の中間に位置するこのボールは、7-ironで6,800〜7,000 RPMというスポーンが求めるスピンウィンドウを完璧に満たした。
新球のテストはDriver試打から始めない。まずチッピングとパッティングで音と感触を確かめ、「硬い」「クリッキーに感じる」と判断した瞬間にリストから外す。短いショットの感触が合格して初めてアイアン試打へと進む。これがスポーンのプロセスだ。
V字ソールが生む「地面との対話」
スポーンはいわゆる「トラップフェーダー」と呼ばれるタイプだ。インパクトで強く体重移動し、クラブをやや急角度で入れてボールを強くコンプレスし、タイトな左曲がりのフェードを打つ。このデリバリーはソール設計が合わなければ、クラブが地面に刺さり、フェース角とロフトが崩れ、すべての計算が狂う。
そこで機能するのがSrixon ZXiアイアンのV字ソール設計だ。リーディングエッジ側のバウンスを高め、トレーリングエッジ側を低く設定することで、急角度のデリバリーでも地面でクラブが詰まらない。スポーンは旧来の別モデルを試打した際に「ターフを掘り返してしまった」と語っており、このV字ソールなしに今の球筋は成立しないと断言している。
セット構成も緻密だ。4番・5番アイアンには中空ボディのZXi5を採用して高弾道・高スピンを確保し、6番〜PWは精密なキャビティバックのZXi7(True Temper Dynamic Gold X100シャフト装着)に切り替える。全クラブのキャリー差は11〜13ヤードで揃えており、この一定間隔こそが全米オープンの難セッティングを攻略する距離コントロールの核心だ。
全天候対応の「一本勝負」ウェッジ
60度のロブウェッジはCleveland RTX ZipCore製のカスタム品で、通常のツアー選手が週ごとにバウンスの異なる複数本を持ち込む慣習を採らない。スポーンはヒールとトウに強いリリーフを入れたワイドソールの一本で、硬い芝でも柔らかい芝でも対応する設計を構築した。
Strokeslabの視点
スポーンのアプローチは、Strokes Gainedの観点から見ても非常に合理的だ。SG: Approachで安定してプラスを稼ぐために必要なのは「飛距離の最大化」ではなく「予測可能な弾道の再現」であることを、彼の機材哲学は体現している。
スポーンの機材哲学は「SG: Approachを最大化するには飛距離よりスピンの再現性が鍵」というデータが示す事実を、まさに体現している。全米オープン制覇はその証明だ。
この記事の原文
GOLF.com: How J.J. Spaun Built a U.S. Open-Winning Setup Around Ball and Iron Harmony
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